若松ジャズの伝統つなぐ「エル・エヴァンス」

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エル・エヴァンス 代表 和田俊子さん

6月30日、「若松鉄人ジャズPRライブ」が浄楽寺(赤島町)で開催された。ジャズで若松を元気にしたいとの思いから無料開催しているこのライブには、二百人余りのジャズ愛好家が集い、バンド演奏に聞き入った。

 

 

「住職さんが先代のマスターと意気投合し、毎年六月、最後の日曜日に本堂でジャズの演奏会ができるよう計らってくれました」と語る和田さん。マスター亡き後、「エル・エヴァンス」を経営しながら、「若松で音楽を聴く会」の事務局代表を務めている。

 

- 若松ジャズの拠点「エル・エヴァンス」

ジャズカフェ「エル・エヴァンス」はJR若松駅から徒歩約5分、ホテルルートインの向かい側にある。こぢんまりとした店内の奥には大きな赤いラッパが印象的なスピーカー アヴァンギャルド。壁に飾られた写真が地元で愛され続けたジャズの魅力を物語っている。

「エル・エヴァンス」という店の名はビル・エヴァンスを捩ったもので、母親が営んでいた喫茶店「エル」を引き継ぐ時、マスター(故・和田寬市さん)が自分の好きなビル・エヴァンスの名にちなんで「エル・エヴァンス」と命名。福岡公演に来ていたビル・エヴァンスの控室を訪ねて直談判した結果、快く名前の使用を承諾してくれたとのことだ。

以来、半世紀近くに渡り、若松のジャズシーンを牽引してきた「エル・エヴァンス」は、1991年に「若松で音楽を聴く会」を立ち上げ、若松ジャズの魅力を発信しながら音楽を活かした街づくりに取り組んでいる。

1997年には第一回「若松鉄人ジャズ」を開催。今年で28回目となる鉄人ジャズは、毎回、国内外の著名なジャズミュージシャンが出演する名実共に北九州を代表する音楽イベントになっている。

こうした活動の他にも、市内外の各種イベントに参加してジャズ音楽を多くの市民に楽しんでもらう活動を展開し、2008年には、国土交通省主催の「地域づくり全国交流会議」において、地域づくり国土交通大臣賞を受賞し、マスコミでも大きく取り上げられた。

 

 

- 若松ジャズの伝統をつなぐ

2019年に惜しまれながら逝去したマスターの意思を継いだ和田俊子さんの周りには、ジャズ好きな人達が集まる。エル・エヴァンスでは毎月第1~第4土曜日の夜(20:0022:00)にジャズライブが開催され、直方や福岡からもジャズミュージシャンがやってくる。

「大体予約でいっぱいになります。チャージがないのが魅力、その代わり飲み物や食事をして楽しんで頂きます。演奏が終わったら、ジャムセッションと言って、お客さんが持ってきた楽器やボーカルとして参加したり、和気あいあいとやっています」とジャズライブの様子を語ってくれた。

しかし、若い世代のジャズ離れやジャズファンの高齢化によって、若松ジャズの発信力にかつてのような勢いが感じられないとの意見もある。

こうしたなか、若者層の関心を高めるため、今年10月開催の鉄人ジャズではオープニング・アクトに九州工業大学のジャズバンドメンバーの演奏を予定しており、運営ボランティアとして参加を希望する若者も増えているとのこと。

「九州ジャズ発祥の歴史をもつ若松をもっと知ってもらいたい。鉄人ジャズ開催の時は若松以外からも多くの人達がやって来るので、この町や商店街、色んな店にも貢献できるようにしたい」と語る和田さん。ジャズへのこだわりと若松ジャズの伝統をつなぐ強い思いが、「エル・エヴァンス」に込められている。