洞海湾を拓いた若築建設

若松百年企業若築建設株式会社

若松を興す

2022年2月に国の重要文化財に指定された若戸大橋では、今年9月、開通60周年を祝うウォーキングイベントが開催され、8千人を超える参加者で賑わいました。洞海湾を跨ぐ全長627mの赤い橋のライトアップは、「日本新三大夜景都市・北九州」に趣を添える景観です。しかし、この大橋の歴史よりも遥かに壮大な歴史が洞海湾で繰り広げられ、北九州地域の発展を支えてきました。

明治23年(1890)創業の若築建設は、今年、134年目を迎えた若松のレジェンド企業です。国内外で数多くの大型プロジェクトに取り組む同社は、浚渫・埋立て等の港湾工事を得意とし、その始まりは明治中期からの洞海湾浚渫・若松港築港工事にまで遡ります。

当時、若松港は筑豊炭田で採掘された石炭の積出港として開発が急がれ、工事費用は港や運河を利用する船舶から使用料を徴収して賄うというまさに「民」主導の一大事業を展開しました。

こうした若築建設の歴史や社風について、東京本社広報室長の古郡さん、わかちく史料館館長の家令さん、館長代理の江副さんにお話をうかがいました。

洞海湾(若松港)の開発工事はいつ頃始まったのですか。

江副さん:明治の近代化と共に石炭需要が高まり、中央の大手資本が筑豊地域に進出してきました。大量の石炭を積出す港がなかったことから、中央の事業家や筑豊炭鉱の経営者達が鉄道や港の建設を要望したのがきっかけです。

古郡さん:これを受けて、石野寛平等が中心となって福岡県に浚疏会社の設立を上申。明治23年(1890)に若松築港会社を設立して若松港の開発に着手し、大型船が入港・停泊できるよう開発・運営を行いました。

官営八幡製鉄の誘致が洞海湾浚渫工事に拍車をかけたんですね。

家令さん:八幡製鉄の創業は1901年ですから、その前から石炭積出港としての浚渫工事が行われていました。当時の安川敬一郎会長は誘致の条件として、大型船が出入港できる事と短期間でマイナス6mに浚渫することを約束し、誘致に成功しました。

わかちく史料館

浚渫で洞海湾の深さはどれ位になったんですか。

江副さん:明治の中頃までは水深も浅く、干潮時に地肌が見えるほどだったそうですが、水深が9mになって2万トン級の船舶が入港できるようになりました。浚渫した大量の土砂は洞海湾周辺や浜町・北湊の埋立てに用いられました。

ところで、御社が若松から関東の方に進出されたきっかけは何ですか。

家令さん:日中戦争が始まって、港湾を民間企業が管理するのは国防上問題があるため、昭和13年(1938)に若松港の運営権を福岡県に移管し、総合建設会社になりました。昭和28年(1953)まで洞海湾中心の土木事業を行っていましたが、それまでの実績が評価されて、千葉県や東京に進出することになりました。

現在、事業の主体は東京周辺ですか。

古郡さん:いや、全国的に展開しており、海外でも事業展開しています。実績としては東南アジアが多いですが、スエズ運河の浚渫等にも加わりました。また、建設関係の工事も行っています。最近の事業としては、横浜の新本牧のコンテナふ頭とか、中部国際空港の滑走路増設関連事業、北九州空港の滑走路延伸に関わる地盤改良工事などです。

響灘の洋上風力発電事業にも関わっていますよね。

古郡さん:洋上風力本体の部材が大きく重いため、これを保管・管理できる護岸整備などの事業に関わっています。響灘地域は元々埋立地ですから地盤が弱く、重量に絶えうる補強改良が必要です。洋上風力本体の着底工事には直接携わっていませんが、今後、取り組みたいと思っています。秋田港や能代港での実績を踏まえ、洋上風力「基地港」の護岸整備事業が中心になります。

最後に若築建設の社風ですとか、地域貢献についてうかがいます。

家令さん:入社して40数年になりますが、穏やかと言うか、堅苦しい企業風土ではないですね。

江副さん:地域貢献で言いますと、「わかちく史料館」は、地域の産業観光振興に協力し、地元の小中高生や大学生、地域住民の方々に無料で見学いただいております。若松の歴史や洞海湾の成り立ちを後世に伝えていくという面での役割は大きいと思います。ここ若松本店の女性社員は15名位ですが、全社的には150人位です。勿論、若い女性社員も工事現場に出て働いていますし、育児が終わって現場に復帰した女性社員も多いです。

集合写真

人材育成という観点から地元高校生などへの働きかけを行っていますか。

古郡さん:若松だけではないですけど、北九州市で中・高生を対象にした「北九州未来学」に参加しています。西日本展示場で毎年12月に行われますが、我社を含め約30社が出展して、職業体験のような行事を行っています。我社は大卒者採用がほとんどですから、若松出身の学生が大学卒業後、若築建設を選んでくれるとうれしいですね。

 

若築建設(株)の詳細は、https://www.wakachiku.co.jp/をご覧ください。

「わかちく史料館」については、https://www.wakachiku.co.jp/shiryo/をご覧ください。