地元若松を探究する若高生の挑戦「学故創新・若松学」
福岡県立若松高等学校教諭 和田祐輝さん
若松トピックス
若松高等学校の前身は、明治45年(1912)に開校した若松町立若松実科高等女学校と大正7年(1918)に開学した若松中学校です。両校は戦後の教育改革によって統合され、昭和24年(1949)、福岡県立若松高等学校と改められました。
若松町立若松実科高等女学校の開校を創立年とする若松高校は、今年で111年の歳月を重ね、正面玄関を入ると壁に歴史を感じさせる校歌の額縁が掲げられています。作曲は甲子園全国高校野球大会の大会歌「栄冠は君に輝く」など、数多くの名曲で知られる古関裕而、詞は郷土出身の芥川賞作家・火野葦平が綴っています。
現在の若松高校には、若松区や戸畑区、八幡西区・東区及び遠賀郡、中間市から約400名の生徒が通い、その内、若松区在住の生徒は約5割程度とのこと。地域の少子高齢化が若松区内唯一の県立普通科高校にも影響を及ぼしています。
こうしたなか、若松高校の生徒たちが立ち上がりました。昨年の創立110周年を機に「学故創新・若松学」という若松の過去・現在を探究し、若松の未来を提言する活動を令和3年度(2021)より展開しています。地元若松を多様な視点から学び、フィールドワークに重点を置いた取組は、昨年の「福岡県とびうめ教育表彰式」で教育実践部門の優秀賞を受賞し、「福岡県青少年アンビシャス運動参加団体等表彰」も受賞しました。
今回は、高校生が取り組む地域創生型学習のモデルケースとして注目される「学故創新・若松学」の担当教諭、和田祐輝先生にお話をうかがいました。
「若松学」を始めたきっかけは何ですか
和田さん:このまちの賑わいを取り戻すためにはどうしたらいいか。現在の若松の特色を「生きた教材」として捉え、生徒たちが自ら観察し、実体験を通じてまちの魅力を見つめ直すことにしました。
こうした活動が生徒たちの郷土愛(シビックプライド)を育み、若高生が将来にわたって地域活性化の一翼を担うきっかけとなるのではないかと考えました。また、「若松学」での活動経験がそれぞれの地元への関心を高め、ひいてはSDGsの11番目のターゲットである「住み続けられるまちづくり」に取り組む動機づけになるのではと考えました。
具体的にどのような取組をされましたか
和田さん:「若松学」の取組は、令和3年度に入学した生徒から始めました。1・2年次の「総合的な探究の時間」に若松を8つのカテゴリーに分け、各班がそれぞれにフィールドワークを行いました。各班の担当分野は、中世史・近代史・観光・商店街・企業研究・再生可能エネルギー・リサイクル・地域支援です。
例えば、観光班は若松の観光資源をいかすため、農産物の収穫体験や直販店への訪問などを通じて若松の魅力を探りました。また、企業班は多くの地元企業を訪問し、その成果を「若松区企業探訪(上・下巻)」としてまとめ、発刊しました。この冊子は、地元企業への就職を希望する本校生徒の情報源として活用され、ご協力頂いた企業、区役所や若松図書館、区内の小中高等学校などにも配布しました。
取組に対する生徒たちの反応はどうですか
和田さん:生徒たちは、遺構や遺跡を探訪することで地域の歴史を深掘りしたり、商店街でインタビューを行い、商店街の賑わい復活の提案をしたりと、様々な場所でフィールドワークを実施することで、学校の授業だけでは学べない貴重な体験をしたようです。
また、ICTやスライドを用いた生徒の発表能力が向上しました。部活動に加えての活動ですから、生徒の負担も大きかったと思いますが、総じて「若松学」を楽しんでいました。
今後の計画について聞かせてください。
和田さん:生徒たちの3年間の努力と地域の方々のご協力で成果を上げることができ、「若松学」が評価され、外部からの依頼として学外でその成果を発表する機会も増えました。
これまでの活動は、創立110周年の記念事業の一環として実施することができましたが、今後は費用等の関係でフィールドワークを縮小せざるを得ないと思います。しかし、「学故創新」(故きを学びて、新しきを創る)をテーマにした「若松学」の試みは、これからも若松高校の伝統として受け継ぎ、地域との連携を深めるなかで若松高校の役割をさらに発展させていきたいと思っています。
「学故創新・若松学」の詳細は、下記の若松高校ホームページでご覧ください。
http://wakamatu.fku.ed.jp/one_html3/pub/default.aspx?c_id=185